概要:社会的証明(Social Proof)
大多数の人間が正しいと信じていること, あるいは実行している行動を正しいと判断する個人の意思決定スキーマのこと.
関連情報
用語の出典について
社会的証明の原理(the principle of social proof)はロバート・B・チャルディーニの著書
『Influence: How and why people agree to things』で提唱された用語である1(Robert B. Cialdini, 1985).また, 確認できる文献上の記述において当該著書の出版年を1984年と記載しているものや2, 1983年と記載しているものがある3.
概念について
他者や集団といった大多数の人間の行動が一個人の態度や信念, 行動に及ぼす影響については, 先駆的な社会心理学者らによって早い時期から研究が行われていた(Sherif Muzafer, 1936; Asch Solomon E, 1951).
社会規範と態度変容について研究した社会心理学者M・シェリフ(Muzafer Sherif)は, 個人が形成する判断基準(his own frame of reference)についても, それはその個人が集団を観察した際に整合的な方向に修正される, と述べている4.
また, 集団の圧力が個人の判断に及ぼす効果について研究したソロモン・アッシュ(Solomon Eliot Asch)は, 集団のサイズや反対意見の強さ, ストレスの大きさ, 特に取り組むべき問題の不明瞭さ, また個人や集団同士の関係性といった, 特定の状況がどのように個人の意思決定に影響を及ぼすかの調査を行った5.
ロバート・B・チャルディーニの著書『Influence: How and why people agree to things』で提唱されている社会的証明の原理とは, 上記概要で述べた通りであり, 特に新しい環境や不確実な状況下においては大多数の他者の行動は正しく, 他者と同じ行動を取れば間違いも少ないと判断し, 個人は自分が取るべき行動を決定する. 個人はこのような意思決定方法を用いることで素早い判断が可能となり便利(convenient shortcut for determining how to behave)だが, それは同時に, その個人は嘘をついて暴利を貪ろうと企てる他者の攻撃には晒されやすくなる1.
資料
1. Robert B. Cialdini. (1984). Influence —How and Why People Agree to Things. New York: Morrow. p. 117
2. Axelrod, R. (1986). An evolutionary approach to norms. American political science review, 80(4), 1095-1111.
3. Eckles, R. W. (1984). Reviewed Work: Influence, How and Why People Agree to Things. The Journal of Personal Selling and Sales Management, Vol. 4, No. 2 (Nov., 1984), pp. 70-72 (3 pages)
4. Sherif Muzafer. (1936). The Psychology of Social Norms. New York: Harper and Brothers.
5. Asch, Solomon E. (1951). Effects of Group Pressure upon the Modification and Distortion of Judgment. In Harold Guetzkow, ed., Groups, Leader- ship and Men. Pittsburgh: Carnegie. P177-190.